本日の訪問先は,マサチューセッツ工科大学(MIT)です。
まず、MITで日本語文化を研究なさっているIan Condry先生の授業に3時間ほど参加させていただきました。この授業は「Anime: Transnational Media and Culture」という名前の授業で、アニメが扱う科学技術、ジェンダー問題、セクシャリティについて考察すると共に、なぜ世界に誇る文化に成り得たのかをアニメの内容だけではなく、伝える媒体、スポンサー、放送局、ファンの観点から考えていくというものでした。
このセメスターが始まって3回目の授業ということもあり、スライドを使いながら学生たちが2~3分ほどで自分のことを自己紹介する「PechaKucha」から始まりました。学生は学部3~4年生が大半だったのですが、物理学、情報工学、無機材料、生命工学など多用なバックグラウンドを持っている生徒で構成されていました。彼らは、自分で動物を保護する団体を立ち上げたり、日本でインターシップを行ったり(MITにはMISTIと呼ばれる外国でインターシップを行う制度があります!)と積極的に活動している様子が伺えました。やはり、基本的に学生はアニメに興味があり、その知識には到底太刀打ちできそうに無かったです。
次に先生の講義が行われました。
まず、アニメ、映画、音楽などの娯楽産業を繁栄させていくには消費者の事を考えるのが1番大切である、という導入から始まり、アニメ業界は現在、海賊版がインターネット上で大量に流出している問題を抱えている、日本はとアメリカではマンガ業界のターゲットが異なること、1950年代ごろにアメリカ政府がマンガの表現を規制する法律を定めていたことなどを扱っていました。
授業の中で特に印象に残ったのは、
アメリカのマンガのキャラクターにスーパーヒーローが多いのは、そもそも読者を子供と想定しており、ルールを守る象徴としてスーパーヒーローが存在するのに対し、日本は必ずしも子供向きに限らないところに読者層を想定していることや、
アメリカにおいては、作家、クリエイターなど作品に関わった人が著作権を持っているのに対して、日本では作家に限るという、アニメが持つ著作権問題についてなど、普段、我々がアニメを見る際には意識することがない問題を扱っていました。
著作権に関する話題では、タイタニック号はただの船の名前だったのですが、映画として商業的に成功することで、著作権が生じ、ハリウッドには利益が入るようになったという事実を元に、著作権は制作プロセスの中で1日おきに生まれるものなのかという問いを生徒に投げかけており、興味深かったです。
それ以外にも、マンガ業界のピラミッド構造、キャラクターとしてのボーカロイドの特異性など多種多様な話題に触れていました。
授業の最後に、4人ほどのグループに分かれてディスカッションが行われ、僕達も参加することができました。日本のアニメ業界では、作画を海外の企業に依頼することで制作費を抑える事が行われていることについてなど業界の問題点から、日本語にあって英語にはないニュアンスを海外の人が表情や仕草から読み取るのは難しいか、など異文化からみたアニメについてなどを話し合いました。
日本における諸外国の文化を学ぶ授業で、歴史的な背景だけでなく、現在直面している構造的な問題について教授と学生、学生間で議論することはほとんどないのではないでしょうか。教授が授業中に何回も質問時間を設けて、生徒が積極的に質問しており、さらには生徒間でも議論が始まってしまい、熱気に溢れていました。
夜は、現在、MITに留学中の方々とご飯を共にすることができました。
高木さんは現在博士課程2年生で、日本の学部を卒業後、MITにて量子情報について研究をなさっています。一方、釣巻さんは、フランスの修士課程にて修士号を取得した後、こちらに来て博士課程2年目の学生としてナノエンジニアリングを専門としています。
お二人とも、日本では自分の専門領域が良い環境で学べないために、MITに留学し毎日、朝の10時から夜の1時まで研究しているそうです!
日本とアメリカにおける教育環境の差異、研究環境、実験の取り組み方などから、1週間のスケジュール自主セミナーや研究以外の雑務、金銭的、将来像など、かなり個人的な事柄についても伺えました。
特にUC,Berkeleyと同様にトランプ大統領に関しては驚かされました。学内にはほとんど賛同者がおらず、当選した翌日には校門に、意見共有できるボードが出来たり、学長から学生全員に宛てに我々は皆、仲間であるというような趣旨のメールが来る、さらには学内にセラピー犬と触れ合える場所を設置するなど、異様な状態が続いているそうです。
大学などの高等教育機関の思想が偏っている事自体が問題であり、彼の主張が良い、悪いより1つ上の次元で考える必要性があると仰っていました。