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3期 ヨーロッパコース 4日目

勝俣です。4日目は、初めての専門分野への訪問となりました!

Morgan Advanced MaterialsのThermal Ceramics部門に訪問しました。Morgan Advanced Materialsは非常に長い歴史をもち、材料を扱うイギリスのグローバル企業です。Thermal Ceramics部門では、高温環境下で使用する断熱材としてのセラミックス製品を扱っています。

今回はその中でもファイバ(繊維の断熱材)の研究について、アマンダさんから詳しい話を伺いました。ファイバはビルやプラント、船における防火や、炉や窯の断熱材料に使用されています。セラミックスは本来、温度変化による熱衝撃に弱いのですが、繊維にすることで熱衝撃にも強い材料になっているのです。

 

アマンダさんはとてもフレンドリーな方で、少し緊張していた私たちにとても親切に対応してくださり、すぐに打ち解けることができました。

 

まず初めに、ファイバの製造方法について伺いました。ファイバには非晶質ファイバと結晶質含むファイバがあります。非晶質ファイバであるスーパーウールはアルミナやシリカなどを原料としており、粉末原料を2000℃で溶解し、回転するローターにあてることで繊維化しているそうです(Melt spun fibre)。結晶質を含むファイバであるでは、高純度アルミナとシリカなどを原料とし、粉末と液体の原料を混合してゾルとし、脱泡後、ゲル繊維とし、これを焼成して部分的に結晶化することで作製しているそうです(Solgel fibre)。どちらも、より高温で使用できる材料を探索しているとのことです。

 

次に、ファイバの問題点について伺いました。生体溶解性が悪いファイバは体内に取り込まれると健康に悪影響を及ぼす可能性があります。体内への影響は摂取量、繊維の太さ、繊維の体内での持続性によって決定されます。直径が細いほど体内に取り込みやすく、長さが長いほど分解がしにくいため、健康面では太くて短いファイバが要求されます。優れた熱性能を発揮するためには細い繊維が必要な一方で、生体溶解性が高いファイバには太くて短いことが要求され、そのバランスを考えることが非常に大事とのことでした。

 

アルミナやシリカなどの組成の比率を変えながら実験を繰り返し、最適な組成を見つけていくそうで、説明中には無機材料工学科の私には非常に馴染み深い3元系状態図も登場しました。

 

ファイバについてプレゼンテーションをしていただいた後は、私たちからもEPATSについてのプレゼンテーションを行いました(後述)。その後、ファリドさんにパイロットラインと実際の製造ラインを見せていただきました。パイロットラインは製造ラインに比べて小さな作りをしていて、研究段階と量産段階によってどれくらい規模が異なるのかを知ることができました。

 

さらに、様々な測定装置も見せていただきました。作製した試料は最初に健康面についてのテストが行われます。体温に等しい温度の水浴に入れて回転させることで、数時間後にどれだけファイバの太さが変化したかや、pHなどを調整し肺の中の状態に似せた溶液中にファイバを入れ、4週間後のファイバの溶解度がどのくらいか、などを測定し、実際に使用できる材料なのかを判断するそうです。その他にも、XRF、XRD、走査型電子顕微鏡、ASTMによる熱抵抗率測定装置、機械的性質の測定装置なども紹介していただきました。

 

ファイバの詳しい製造方法や、現在一番力を入れている研究問題、さらにどのような手順で研究を進めていくのかを実際に装置やラインを見ながら知ることができ、非常に勉強になりました。

 

EPATSについてのプレゼンテーションでは、アマンダさんとファリドさんに、私たちが今回どのような目的をもって渡航しているのか、訪問のためにどのような準備をしてきたか、過去の先輩方の実績、などについて説明しました。私たちの訪問目的の中には、最先端の研究を知る以外にも、ヨーロッパの文化を理解するということがあります。その目的を伝えた際には、EPATSが渡航で文化的な施設を潜ることについて好感をもっていただきました。そして、イギリスの社会保障制度について話をしてくださいました。日本との一番の違いは医療費が無料ということでした。イギリスの社会制度は誇らしいものであると感じているようで、日本人が日本の社会保障制度に対して抱いている感情と大きく異なると感じました。

 

最後に昼食をアマンダさんとファリドさんといただきました。その際には、ファイドさんは修士まで生体材料を扱っていたこと、Morganでは生体溶解性について研究しているためバイオ系のバックグラウンドをもった人も働いていることや、企業に勤めながらPhDを取る方法などを教えていただきました。

 

最後にアマンダさんと写真を撮りました。

短い時間でしたが内容は非常に盛りだくさんで、有意義な時間を過ごすことができました。

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