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3期 ヨーロッパコース 8日目

8日目は、アーヘン工科大学を訪れました。まず初めに、菱川が紹介します。

初めにRosenbaum Labを訪れました。インドネシア出身のDesyさんが温かく迎えてくださり、ラボを案内してもらいました。この研究室は、50名以上のPHDの学生が所属し、修士や技術職員を含めるとおよそ100名が所属する大所帯です。研究分野は、生物電気化学 (Bioelectrochemistry)。端的に言うと、微生物の働きにより電気を生産する研究です。Rosenbaum Labでは、2種類の微生物(シュードモナスとアセトバクター)と電子の運び屋であるメディエーター(Phenazine)を用いて、電気を生産する研究をしています。

早速、デスクの上に、泥が詰まった容器を発見!! これは、もしやと思って聞いてみると、やっぱりそうです。堆積物型微生物燃料電池(Sediment Microbial Fuel Cell)です。

 

私は以前、微生物の働きによりヘドロから電気を生産できる堆積物型微生物燃料電池について1年間研究していました。生物電気化学に強い関心を抱いていた私は、この分野の研究室へ訪問したいとずっと思っていました。

白衣と保護めがねを身にまとい、Safe Level2の実験室に入りました。残念ながら、実験室内は撮影禁止ということで、写真はありません。今日は1か月に1度の掃除の日ということで、研究室の人たちがデスクをふいたり、不要な培地を滅菌したり、廃液の処理をしたりしていました。

 

実験室には、HPLC (高速液体クロマトグラフィー)やPCR(Polymerase chain reaction)装置、超音波発生器、ナノリットルの水滴のDNA濃度を測定できるNano dropなど分析装置が所狭しに並んでいました。

 

薬品室では、アルファベットが書かれた2 mくらいの高さがある試薬棚を壁から引き出す構造になっていました。試薬瓶にはすべて番号がふられ、試薬の位置もすべて決められていました。試薬を使ったら元の位置に戻すことと、試薬の量が少なくなったら技術職員に言うことが徹底されているようです。100名以上が所属する研究室でスムーズに研究を進めるためには、このような厳格な管理が必要不可欠であると感じました。

 

4℃の冷蔵室には、たくさんの培地や菌株が保存されていました。さらにその奥にある-20℃の冷蔵室にも菌株が保存されていました。論文を発表するまでは、菌株はこの部屋に保存しておくそうです。

 

最後に、微生物電池を見せていただきました。透明な容器に、スターラーとカーボンの電極が入っており、黄緑色や緑色の溶液で満たされていました。用いる菌体、メディエーターの量で溶液の色が変わるそうです。

以前、論文の写真でしか見たことがなかった微生物電池の実物を見ることができて胸が高鳴りました。この電池で得られる電流はまだまだ低く、実用化に向け越えなければならない課題がたくさんあるそうですが、将来的には排水を資源として電気を得るクリーンエネルギーの一つとして期待されているそうです。今後の進展が望まれます!

当初の予定にはなかったのですが、Desyさんが、隣の研究室であるSchirawski Labも案内してくれました。この研究室では、植物病原菌であるSporisorium reilianumに着目し、SorghumやMaizeなどモロコシ属の植物に対する感染性を調べています。モロコシ属が持っている防御機構の遺伝子を特定し、より病原菌に耐性のある品種を作製することを目標にしているそうです。

お昼の時間がやってきました。ここでは、弁当を作ってくる人が多いようです。給湯室にあるドリンクサーバーには、水の化学式H2Oが書かれていました。さらにコーヒーの化学式が… (笑)

 

続いて黒崎が担当します。
アーヘン工科大学の見学を終え、案内をしてくれたDesyさんと、Desyさんと同じラボのIvanさんとご飯を食べに行きました。

Desyさんはインドネシアからの留学生です。ドイツにやってきたのは、1年半前で、ドイツに来てからドイツ語の勉強を始めたと言っていました。
Ivanさんはベルギーからの留学生で、博士4年です。ドイツ語、英語、フランス語の3ヶ国語を話せるそうです。
渡航中に会う留学生は、自国の言語に加え、英語や第二外国語を話せる人が多かったように感じます。

アーヘン工科大学からレストランへはバスで移動しました。ドイツのバスはとても長く、日本と比べると2.5倍ほどあると思います。バスであるのにもかかわらず、3両編成になっていました。

Desyさん達に案内されて来たのは、ドイツ料理のレストランです。店内には木製のタルなどが置いてあり、照明は薄暗く、オシャレな雰囲気の店でした。

「日本料理を食べたことがあるか?」と尋ねてみると、インドネシアにはたくさん日本料理店があると言われました。また、ここドイツ・アーヘンにもたくさんの日本料理店があるようです。インドネシアやドイツのみならず、ヨーロッパ各地でも日本のお店は人気だそうです。特に人気なのは、寿司とのことでした。ただ、海外の人は“生”のお刺身を食べることに抵抗がある人も多くいるようで、メニューには“raw(生)”と“cooked(加熱済)”の2種類が用意してあるようです。

私たち3人は、それぞれミートボール、ブラッドソーセージ、ビーフを注文しました。値段は、ビーフが約14ユーロで、それ以外は約10ユーロでした。お昼ご飯のわりには、1300円前後と少し高めでしたが、美味しかったです。

ドイツといえば、ソーセージとビールのセットが有名です。注文の際には、Desyさん達に、「ビールも飲むか?」と聞かれましたが、さすがにお昼であったので、注文はしませんでした。

ブラッドソーセージというのは、豚肉に豚の血液を混ぜて作られたソーセージです。血液の味がするのかと恐る恐る食べてみましたが、意外にも臭みは一切なく、これまで日本では口にしたことが無い味のソーセージでした。

 

ビーフは、ドイツならではの甘いソースで味付けされた紫キャベツが添えられていました。


Desyさんはベジタリアンのようで、ベジタリアン専用のメニューを注文していました。ベジタリアン専用のメニューがほとんど存在しない日本とは異なり、ドイツのレストランや、前日に訪れたマーチン・ルーサー大学の食堂では、ベジタリアン専用のメニューありました。日本への外国人観光客が増えている現在、日本のお店もベジタリアンに対応したメニューが必要であると感じました。

ドイツではフォークとナイフを使い食事をしますが、Desyさんの母国であるインドネシアでは、フォークとスプーンで食べるようです。ナイフを使わないで食事をする、日本とインドネシアの共通点は、“料理は事前に切り分けて提供される”ことだと思いました。

食事を終え、レストランから、アーヘン工科大学の研究室に戻る途中、アーヘン工科大学キャンパス内で奇抜な色の大学病院を見つけました。配管は黄色とグレーの縞模様で統一されていました。病院ではなく一見、工場と見間違えてしまうような外観でした。病院内は全て緑色で統一されているそうです。
またこの病院にはヘリポートも備えられているそうです。日本の大学にはなかなか存在しないので、とても驚きました。

ここからは、午後の研究室見学について、再び、菱川が紹介します。

 

午後からは、生物化学工学の研究室を見学しました。初めに、300 mLの培養槽からスタートして、培養槽を1 L、さらには3 Lへとスケールアップして、微生物に目的の物質を生産させる研究をしています。高い菌体密度を維持しながら、目的物質を生産するためには、培地に多くの酸素を供給する必要があります。

そして、培地に供給された酸素や微生物が放出した二酸化炭素の濃度を測定することが極めて重要ということでした。そこで、この研究室では、培地に含まれる揮発性のガスを分析できる装置を使っていました。

この研究室では、金曜日は16時からビールを飲みに行くことが多いようですが、今日は忙しいということで、ビールをご一緒することはできませんでした。次、会う機会があれば、ビールを飲みながら、交流をより深めたいと思います。

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