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3期アメリカ15日目

本日の訪問先の一つ目はニューヨーク近代美術館です。
通称「MoMA(Museum of Modern Art)」と呼ばれ,
主に現代アートをメインに取り扱っている美術館です。
それ以外にも,インダストリアルアートやゴッホなど
幅広い展示を行っています。

今回は,中でも印象的であった作品をいくつか紹介していきたいと思います。

まずはこちらの作品です.
こちらは,抽象表現主義の中ではもっとも有名な画家のジャクソンポロックの作品
「One: Number 31」です。

抽象表現主義の,特に彼の作品の特徴として,
キャンバスを床に置き,
自分の表現したいものを表現するのではく,その瞬間に生まれた偶然性を生かし
(自己の無意識を,発見し)
ポアリング,ドリッピングといったアクションペインティングを
行うことがあげられます。

ポアリングとは, 絵の具缶から直接絵の具を滴らせる
ドリッピングとは 筆や棒を使って,絵の具を滴らせキャンバスに描く方法です。
どちらも,これまでの描画方法にはなかったものであり
描いている本人もどんな絵が出来上がるかわからないのです。

また,絵の具をそのまま落としている分,
絵の具の重なりであったり,混ざり合う感じが
近くで見るの手に取るようにわかり
まるで,目の前でポロックが描いているのを,逆再生しているような錯覚さえ覚えます。

次に紹介するのは,アンディウォーホルの描いた「キャンベル・スープ缶」です。

アンディウォーホルはポップアートという芸術分野で活躍した芸術家であり
ポップアートとは,1950~60年代イギリスで誕生した英術の流れで
大衆的なイメージの繰り返し(今回はキャンベルスープ缶)を用いることで
現代社会を映し出す鏡となり,大衆の無意識を照らすことを目的としています。

この展示の壁の裏が,レストランになっているのも,何とも皮肉なようにも思えました.

このほかにもモンゴリアンやピカソ,ゴッホなど数多くの著名な作品を目にすることができました。

最後に紹介するのは,MoMAの入り口ロビーに展示されている
「The Original Emoji」という作品です。

日本人の皆さんなら,ほとんどの人が一度は使ったことがあるであろう
メールなどで使われる絵文字ですが,実はこれは日本独特のもので
この展示を興味津々に鑑賞している方が多くいらっしゃいました。

私たちが当たり前だと思っているものや常識も,
海外でそれが実は,日本特有だったと気づかされるいい例ですね。

本日二つ目はPratt Instituteを訪問しました.Pratte Instituteは芸術系の大学ですが特に3次元のデザインを得意としていて建築,インテリアデザイン,インダストリアルデザインで高い評価を得ている全米で屈指の私立の美術系大学です.また,イギリスのImperial college London,日本の慶応大学との独特な交換留学制度をはじめとして教育にも力を入れている大学です.

キャンパスはニューヨーク郊外のブルックリンに位置しています.ブルックリンは多くの芸術家が住んでいることもあり特に近年ファッショナブルな街として観光客が増えつつある町です.しかし,ダウンタウンであることからキャンパスの周りの地域はあまり治安が良くないようで学校内はセキュリティーをかなり厳重にしている印象を受けました.

今日の活動は午前にキャンパスツアー,正午に教授と1時間ほどIndustorial Designについて意見交換し,午後の色彩と3次元の立体の関係についての授業を受けました.キャンパスツアーで印象的であったことは古い建物を用いているということです.

特に図書館に象徴的であったのですが,細部までこだわり技巧を凝らした斬新かつユーザーを楽しませるためのデザインにあふれている印象を受けました.この学習環境で勉強するからこそ創造性・美的センスが養われていくのかと思いました.

今日の話を聞いて工学系の方から見たインダストリアルデザインとデザイン系の方から見たインダストリアルデザインは全く違うことを知りました.工学系から見たデザインとは事前学習した通り「ユーザーの観点からみたものつくり」のことを「デザイン」と定義していましたが,デザイン系の方から見ると見たときに「かっこいい」と感じるあくまでも見た目や作り手の感性を重視したものつくりのことを「デザイン」と定義しているとわかりました.体験授業では三次元でどのように色が変化してみることができるのかということについて学習しました.各生徒が与えられた動植物の色を見た目・手触りを考慮して,手に入る素材を使って再現したものを発表するという授業でした.工学ではものつくりで物資を取り扱う時には強さや変形について考察していきます.例えば我々は鉄鋼について考える時にどのくらいで塑性変形してどのくらいで破断するのか,どのくらいの力でどのくらい変形するのかを考えます. しかし,デザインの場合は全く違いました.その素材が表現する印象・感情について考察していきます.鉄くぎの例を出すと,何本の鉄くぎを円形に並べさらに中心には色の異なる鉄くぎを円形に並べます.こうすることにより花のめしべの部分を表現していくといった具合です.ですから,インダストリアルデザインの根幹にあるのは「ものの形状と色彩」であり,エンジニアリングの根幹にあるのは「ものがどのように作用するのか」にあると感じました.

近年,エンジニアリング・デザイン・ビジネスの3つの要素を兼ねそろえた人材育成が重要であると,デザイン思考の事前学習で学びました.この3つのプロフェッショナルになることは相当難しいことです.そこでこの3つを兼ねそろえる人物像について伺いました.この3つのうち1つ,2つに秀でていればよく,プロフェッショナルではない分野についてはその分野の考え方を理解していればよいのではないかというのが答えでした.ここに我々EPATSが専門知識の浅い1,2年生のうちに海外に渡航させる意味があるのだと思います.まだ専門知識がないためにどんな考え方でも受け入れることができます.僕の場合機械工学が専門です.機械工学は理論に基づき設計する分野なので一般に見た目で設計することは嫌います.しかし,機械工学をまだ専門にやっていないために今回のような見た目・感性で機械を作っていくことに多少の違和感は覚えるものの吸収することはできます.専門分野を深く知っていない分,広く浅い知識を吸収することのできる貴重な期間ととらえることができます.ですから,これからのEPATSの参加者にはぜひ自分の専門分野と全く異なる訪問先にも行ってほしいと思いました.
最後にPratt Instituteの一番素晴らしいと感じた点についてお話して今日のブログを終わりとします.生徒を全員同じ体験をさせないことです.具体的には2年生のプログラムは何種類か用意されていて個人の選択により決定します.そして,別々の経験を積んだ学期末に全員集合にて,学んだことについて共有します.このことにより様々なアイディアが生まれ,創造性が飛躍的に向上するようです.従来の日本の教育ではどのように規格化された人材を輩出していくかにとらわれている気がします.しかし,同じような人材が集まっても同じような結論しか出ないとも言えます.これからは情報速度の向上により「安定の時代」から「常に変化する時代」に突入します.この中で同じような結論しか生まない集団ではなく,いろんな人が集まって多様な結論を提案できる集団になるべきだとも感じました.

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