Home » 活動報告 » 3期 » 3期ヨーロッパコース » 3期 ヨーロッパコース 5日目

3期 ヨーロッパコース 5日目

ヨーロッパコースの黒崎です。

ヨーロッパコース5日目はケンブリッジ大学Bio-Inspired Robotics Labを訪問しました。

まず研究室を見学させて頂きました。

飯田先生の研究室は理論ではなく、実際にロボットの製作を行う研究室です。研究室内は製作途中の様々な機械が散乱していました。

 

まず初めに「ロボットと人間の違いは何か?」と聞かれました。「意識があること?」と答えると、飯田先生は「正解は1つに決まらないが、強いて言うならば”人間の体は柔らかくロボットの体は硬い”点が違いである」と仰っていました。

 

4つの機械、ロボットを見せてもらいました。

1つ目は人間の2本の指を模倣したロボットです。人間の骨、腱、筋肉の形を再現したパーツを再現して、手の動きをいかに制御するかという研究でした。2つ目は、伸縮性のあるセンサーです。人間の体は柔らかく、それを模倣したロボットを開発するためには、柔らかいセンサーが必要なようです。3つ目は、ユニバーサルグリッパーです。ドラえもんの白い球体の手のように、物がユニバーサルグリッパーと密着することにより、物を持ち上げることができるようです。4つ目は、農作物を収穫するロボットです。ジャガイモやニンジンなど硬い野菜を収穫する大型機械は既にありますが、イチゴなどの柔らかい食べ物を収穫する機械は無く、開発することが求められているようです。





 

次に研究室見学を終えた後、工学部のキャンパス内を案内して頂きました。

製作場や製図室、実験室などはどれも広く設備が整っていました。先生やTAさんなどは少なく、生徒が自ら課題を進めていくような印象を受けました。

 

 

キャンパスを案内して頂いた後は飯田先生と共に、カレッジ内の食堂で食事をしました。カレッジというのは、先生と学生が衣食住を行う寮のような空間です。

カレッジ内には教会や国宝級の書物が眠る図書館などがあり、ケンブリッジ大学の歴史を感じると同時に、ケンブリッジ大学が宗教の影響を強く受けていることを実感しました。

 

 

続いては、勝俣が担当します。

日立とケンブリッジ大学の共同研究所(HCL)に訪問しました。HCLは、日立がナノエレクトロニクス基礎研究を推進する目的で、ケンブリッジ大学キャヘヴェンディッシュ研究所内に設立した産学連携研究所です。今回は、スピントロニクスについてをメインに紹介していただきました。

まず、Wunderlichさんからスピントロニクスの歴史と、日立ケンブリッジ大学研究所で行われているスピントロニクスの最先端の研究内容についての説明がありました。

記録素子への書き込みは、

磁場により磁化反転させて制御(HDD・MRAMへ応用)

→スピン偏極電流によりスピントランスファートルクを生じさせ、磁壁を移動して制御(STT・MRAM・DWへ応用)

→電場により歳差運動の角運動量を変化させ、磁壁を移動して制御する磁気転写

と変化し、デバイスの小型化・低エネルギー化が実現されていったそうです。

また近年のスピンホール効果の発見は、スピン流の発生と検出に大きく貢献しているそうです。

それぞれについて原理も説明していただけたため、非常に勉強になりました。

現在の主な研究トピックスは、「スピンカロリトロニクス・オプトエレクトロニクス・反強磁性スピントロニクス・有機スピントロニクス」とのことでした。

スピンカロリトロニクスやオプトエレクトエレクトロニクスでは、熱または円偏光フェムト秒レーザーによって歳差運動を誘起することができ、スピン流の生成や磁壁の移動に応用可能であるという話を伺いました。

反強磁性スピントロニクスは、Wunderlichさんが今一番力を入れている研究トピックだそうです。反強磁性体はテラヘルツ帯、強磁性体はギガヘルツ帯に共鳴周波数をもつため、超高速に動作する素子としての可能性があるそうです。研究が成功した場合、5年後あたりに実用化できるのではないかと考えているそうです。

反強磁性体のポイントは、正味の磁気モーメントをもたないこと・非磁性とは異なり磁気的秩序をもち不揮発性であること・共鳴周波数が強磁性体よりも高く超高速切り替えが可能であること・強磁性体の多くは金属であるが、反強磁性体には絶縁体、半金属、半導体も存在すること、とのことでした。

どのトピックスも初めて知ったことばかりで、聞いていて非常にわくわくしました。

その後、RoyさんとWunderlichさんと、研究環境やお互いのバックグラウンドについて話をしました。Royさんがスウェーデン出身で、Wunderlichさんはドイツ出身で、この研究室にはイギリス以外の国の出身の人が非常に多いそうです。

Royさんは、環境をヨーロッパとアメリカとで比較すると、アメリカは研究するには問題ないけれど飽きてしまったとのことでした。アメリカはどの州にいってもあまり変わらない一方、ヨーロッパには様々な国があり言語も違います。また、ヨーロッパの建築や食べ物など、文化的な側面も好きなのだそうです。

Royさんは、この共同研究所の環境にも非常に満足しているとのことでした。HCLは、会社でありながらも、ケンブリッジ大学の様々な研究室に囲まれており、学術的な研究を許されている環境にあります。製品だけを考案したり、生徒に教えてばかりであるよりも、中間をとれるこの環境が共同研究のメリットとのことです。

私は、ヨーロッパに訪問して、研究内容だけでなく研究環境についても知りたいと考えていたので、このような話を聞くことができてよかったです。

その後は実験装置を見せてもらったり、量子コンピューターについて研究している方の話も伺いました。最後にWunderlichさんと写真を撮りました。



帰り道は、HCLで働いている東工大のOBである渡辺さんに案内してもらいました。海外への出張経験は数多くあるものの、海外赴任の経験は初めてで、まだ1年目だそうです。そんな渡辺さんの視点から、外国人の発音についてや、教育における日本とイギリスとの違い、交通事情の違いなど、様々なことを教えていただきました。

 

続いて、菱川が紹介します。

Hitachi Cambridge Laboratoryの見学が終わり、次は、ケンブリッジ大学の学生さんとの夕食会。待ち合わせ場所まで、バスで行く予定でしたが、夕方はバスが混んでおり、時間通りにバスがやってこないということで、徒歩で待ち合わせ場所に向かうことにしました。信号を待っていると、偶然にも後ろから自転車に乗った日本人の学生がやってきました。彼の名は篠原さん。ケンブリッジ大学博士課程で物理学を研究しています。篠原さんにケンブリッジ大学の見どころを案内してもらいました。


まず初めに向かったのは、ケンブリッジ大学内のThe Eagleというバー。DNAの二重らせん構造を発見したことで有名なワトソン・クリックは、このバーで話しているときに、DNAX線構造解析することを思いついたと言われています。次に向かったのは、ニュートンの木。ニュートンはリンゴが木から落ちる様子を見て、万有引力を発見したと言われています。およそ800年の歴史を持つケンブリッジ大学では、J. J. Thomson Roadなど、有名な科学者の名前が、通りの名前になっていたりして、歩いているだけでも、その科学の歩みを感じることができます。


一期一会。今回は偶然にもお会いした篠原さんに、ケンブリッジの見どころを案内してもらいました。バスをやめて徒歩にしたからこそ生まれた、この出会いに感謝しています。

さて、次は、ケンブリッジ大学の学生さんとの夕食会です。香港出身のNormanとハンガリー出身のBalazsと一緒にイタリア料理を食べました。2人ともアジア中近東学部の1年生で、日本語を勉強しています。まだ日本語を勉強し始めて、4か月しか経っていないのにも関わらず、2人とも4か月しか学んでいないとは、とうてい思えないほど日本語が上手でした。どうやら、日本語の2000字の作文が頻繁に宿題として出されたりしているようで、難しい宿題に取り組み、それらを乗り越えていくことが、彼らの力になっているようです。彼らの日本語を真剣に学ぶ姿を自分も見習っていきたいと思います。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です