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3期アメリカ17日目

本日一つ目の訪問先はiRobotです.
iRobotとは皆さんおなじみ家庭内掃除機ルンバを開発した会社で,MITの卒業生が設立した会社です.
iRobotはルンバの他に,軍事用ロボット(具体的には,爆発物処理や偵察機,,また地上だけでなく,海中で用いるロボットも)も製作しています.

今回は受け入れてくださったSTEMプログラムマネージャーのLisa Freedさんと,
会社の中に展示されているこれまでの会社のロボットの数々も見ながら
簡単に会社の変遷をたどっていきました.

STEMとはScience, Technology, Engineering and Mathematicsの略です.

初めに見せていただいたのはiRobot初期の,研究目的を中心としたロボットたちです.
これらは面白いことに,私たちがこれまで訪問した,ヘビをモデルにしたヘビ型ロボットのように,アリや,ハチ,クモといった動物や昆虫をモデルにしたものばかりで,
やはりこれまで見てきた多くのエンジニアがそうであったように,
自然からヒントを得て,ロボットを製作することも多いことを実感させられました.

一方で,以前,機械宇宙学科の金森先生の授業でおっしゃっていたのですが
必ずしも,自然界の彼らをロボットにそのまま真似することは,簡単ではない
という意見もあり,なかなか議論の余地はあるところです.

以下の写真は,紹介していただいたロボットの数々の一部です.
かれらは,ルンバのように市販されているものもあれば
研究目的や,試作品で終わったものまで様々で,
しかしどれも一つ一つが,非常に興味深いものばかりでした.



ここで紹介したいのが,下の写真の部屋です.



ここは,職員の方々が,息抜きに訪れたり,アイデアを生み出すところとして使われており
息抜きとはいっても,レーザーカッターがあったり3Dプリンターがあったりするなど
環境としては十分なほど充実しています.
まさにスタンフォードで訪問したdschoolでみた,教室に雰囲気からコンセプトまで
非常に近いものがありました.

この部屋は,同時に,子供たちの工作教室であったり
プログラムなどで使われ,教育の場にもなるのです.
天井からぶら下がっている歯車のオブジェも,親しみやすさを
生み出していますね.

最後に,見学中にあった光景について少しお話してiRobotのパートを
終わりにしたいと思います.
私たちが,説明を受けている際,廊下の奥から謎のマシンに乗った
おじさんが出てきたのです.

(写真F)

Lisa Freedさん曰く,彼はいつもこんな感じなんだそうです.
働いている方が,自分の仕事を心から楽しめる
そんな場を,垣間見た瞬間でもありました.

ニつ目の訪問先は,昨日に引き続きマサチューセッツ工科大学(MIT)です。

MITでは「Japanese Lunch Table」という、日本に縁がある、あるいは興味がある学生が集まってお昼ごはんを食べるイベントが毎週水曜日に開催されています。私達はそこに参加することができました。

下は学部2年生から上は現在MITを卒業し、自らスタートアップを立ち上げている学生まで
いろいろな方が集まっていて、全部で10人くらいの学生の方とお話をしました。

先日のブログにも記載したように、MITにはMISTIと呼ばれるプログラムがあります。これはMITの学生が長期休暇中に諸外国へインターンシップを行うのを援助するプログラムで、基本的に渡航に要する全額を支給されます。
このLunch Tableに参加していた学生の多くが、私達が知っているような日本の一流企業で既にインターシップを行っている、あるいは今年の夏に行う予定らしく、学部生の内に社会参加することが一般的であること、また学生が積極的にそれを利用していることに驚きました。東工大にも同じような制度があるものの、自分が学んでいる分野がどのように応用されているのか知る機会を大学を通して有効活用している学生は少なく、大学と学生の関わり方について考えさせられました。

その他にも授業の内容、専門分野のお話し、日本に興味を持ったキッカケ、インターンシップの実情、起業への考え方、などについて伺えました。
私は、日本の大学への短期留学と2回ほどインターシップを経験している学生と仲良くなったのですが、日本の政治についてどう考えているのか伺ったところ、アパホテルの一連の騒動に疑問を呈して、利用するのを辞めてしまったそうです。
アメリカにも領土問題は存在するものの、多国間との問題よりも自国において独立を求める土地があることの方が大きな問題であることは全く聞いたことが無かったことでした。

夜は、ボストン美術館(Museum of Fine Arts, Boston)を訪問しました。
1870年に設立されたアメリカ国内で最大規模の美術館で、約50万点近くの作品を収容しています。

所蔵品は大きく分けてアメリカ美術、ヨーロッパ美術、古代美術、アジア・アフリカ美術から構成されています。この美術館は日本にも深く関連があり、岡倉天心に由来する天心円があるほか、去年、安倍総理の渡米に合わせて、総理夫人が開催中であった東日本大震災に関する写真展や北斎展を訪問しており、日本文化の発信地としても有名です。

平日の特定の曜日は夜10時まで開館しており、また入館料がタダであるのは驚きでした。

展示内容についてですが、有名作品は一通り鑑賞することができました。
ゴッホの「われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか」の大きさには圧倒されましたし、

モネの「ラ・ジャポネーズ」(モネは1860年代から70年代にかけてパリを席巻したジャポニズムの影響を大きく受けており、ついには、家に日本庭園を作ってしまっています)には印象派が日本文化を吸収する流れが詳しく説明されていました。

館内は天井が高く、広々としており、絵画の前でじっくりと眺める人や床に座ってデッサンをしている人など自由に鑑賞できる雰囲気でした。

現在、ボストン美術館は日本に関する作品をおよそ10万点保持しており、日本以外では最大の所有数となっています。中には国宝級の美術品も含まれています。これは大森貝塚で有名なモース氏などが日本の美術品に魅了され、収集しアメリカへ持ち帰ったことと、この時代(明治時代)はちょうど明治維新の時期であり、西洋文化に比べ日本固有の文化が軽視されていたことが背景にあるそうです。

事前にどのような展示品があるのかは確認していたのですが、その説明の仕方、ユニークな展示方法、展示品を見ているお客さんの反応はこちらに来て初めて気づくことでした。

日本人の美的感覚は、自然への畏敬の念、間を上手く使う、即興的から生まれることやkawaiiのことまで紹介されていました。

また、畳が10畳ほどの部屋が置いてあったり、こうぞ由来の和紙はその質の高さや耐久性で非常に優れていることを理解させるために和紙を実際に触って鑑賞できるようになっていました。

「Japanese Buddhist Temple Room」は真っ暗の部屋の中に、法隆寺の建築様式を元に作られた柱が、鎌倉時代に作られた像を囲う形で配置されてました。厳かな雰囲気を展示作品だけでなく、周りの環境から推測させる配慮が感じられました。

また、西田潤さんという日本人芸術家の作品が部屋をまるまる1室を使って展示されていたのも印象的でした。
西田さんは、陶芸家としていくつもの賞を受賞し、将来を嘱望されていたもののわずか28歳の若さで亡くなってしまった方です。「絶(finality)」という作品が飾られており、生きているものは変わりゆくという自然の摂理に対抗しながら窯で作品を作り続けたそうです。

自分が知らなかった日本の芸術家を発見できた事は嬉く、また、このようにアメリカの美術館で大々的にクローズアップされていたのは日本人としての誇りを感じました。

話しは少し変わりますが、この「地蔵菩薩坐像」の前でデッサンの練習をしているおばさんとお話しをする機会がありました。この像の手の形に興味があり、日本の像は落ち着いていて静かな印象を受けると仰っていました。

美術館は作品を展示するだけでなく、芸術品の管理や補修も当然行っています。
その過程を外から見えるようにした区画がありました。

 

それ以外にも館内には子供のための教育スペース、家族連れのための特別案内所、車椅子で移動しやすいように展示室の扉を自動ドアにするなど、美術館としてお客さんのために出来る努力は最大限する姿勢が至る所で垣間見えました。

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