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ウーブン・バイ・トヨタ株式会社

私がウーブン・バイ・トヨタ株式会社(以下ウーブン・バイ・トヨタ)を訪問したきっかけは、Woven Cityの活動に興味を持ったことです。ウーブン・バイ・トヨタは現在、静岡県裾野市にある東富士工場の跡地にWoven Cityというモビリティのためのテストコースを作る計画を立てており、2024年の夏に第一期の建物が完成予定となっています。トヨタ自動車が現在開発しているモビリティ技術の実験場として活用される予定のこの街は、トヨタ自動車だけでなく、スタートアップ、起業家や住民などの発明家も活用することができ、日本の技術系産業の発展に大きく寄与する可能性を秘めた計画であると考えています。

今回連絡を取らせていただいた石川さんは東工大のOBであり、現在はウーブン・バイ・トヨタにて自動運転技術の開発に取り組んでおられる方です。せっかく東工大のOBの方にお会いすることができるのであれば、何かアドバイスを頂き、今後の活動に生かしたいと考えたため、訪問に加え、石川さんにお話を伺う機会も設けていただきました。

ウーブン・バイ・トヨタの本社は日本橋室町三井タワーにあります。いわゆる日系企業と異なり、フランクで居心地のいい雰囲気を取り入れたオフィスでしたが、暖簾やお座敷などがあり、オフィスのところどころに日本文化を感じました。最先端技術の研究を行う一方で昔から受け継がれてきた文化、思いを大切にするトヨタの姿勢がよく表現されていると感じました。スカイツリーが見える景色が最高な食事スペース、トレーニングルーム、シャワー室、マッサージチェアなどが設備されたリラクゼーションルームなど充実した施設を案内していただいたあと、自動運転の実験施設に案内していただきました。部屋の中には実験用車がおいてあり、この機械を使って様々なシミュレーションを行っているそうです。一般道路で実際に走行することもあるそうですが、少しでも危険を伴う可能性がある場合はこの施設で実験してデータを集めているそうです。今まで自分は自動運転技術と聞くと外部の障害物とのやり取りの技術という印象が強かったのですが、外部とのやり取りだけでなく、車の内部(主に運転手)とのやり取りも非常に重要な技術であると石川さんは話されていました。今後自動運転が普及しても、自動運転から手動運転に切り替える必要がある場面は存在します。そういった場面で運転手の状態を把握する技術が非常に重要になってきます。運転手がスマホを使っていたら運転切り替えのサインに気が付かない可能性もあります。他にも体調不良で倒れている場合、サインに気が付かないと判断するだけでなく、そのまま自動で救急車を呼ぶシステムなども考えられます。こういった細かい技術を整えることで初めてトヨタが開発したいと考えている人を幸せにする自動運転を実現することができるのだと感じました。

実験施設を見学させていただいた後に、デスクエリアに案内してもらいました。デスクエリアではアジャイル開発というスタイルを取り入れており、ハニカム構造のような形でデスクが配置されていました。ハニカム構造の1つのスペースごとに1チーム割り当てられ、スペースの中央においてあるデスクでディスカッションなどを行うそうです。加えて、ウーブン・バイ・トヨタでは社内論文発表会が定期的に開かれているそうです。AIに関する論文は非常に多く、すべて読み切れないため、参加者が自分で面白いと思った論文を持ち寄ってディスカッションを行うことで最新技術にキャッチアップするそうです。会社に入ってからも向上心を持ち続ける意欲の高いウーブン・バイ・トヨタの社員さんの一面が垣間見れました。

[石川さんとのインタビュー]

オフィスを案内していただいた後、プレゼンテーション形式で軽い自己紹介をさせていただき、そのあとインタビューの方に移らせていただきました。インタビューは「石川さんの経歴について」「学生時代と社会人のギャップ」「石川さんと自分の比較」「アメリカでのお仕事について」の四つの項目をメインに進めました。インタビュー内容をすべてかいてしまうと非常に長くなってしまうため、今回は石川さんから頂いたアドバイスに焦点をあてたいと思います。

ウーブン・バイ・トヨタを訪問し、石川さんから次のようなアドバイスを頂きました。

「特定の技術、力をとことん磨き、尖った人間になる。」

実は私にとって石川さんのこの言葉は非常に耳が痛い言葉でした。なぜなら私は尖った人間になることに関して、自分にはその才能がないとあきらめつつあったからです。自分がやるべきことは、尖った人間になることではなく理工系全体の知識を幅広く身に着けることだと考えていました。そしてその知識を用いて突出した技術力をもつ尖った人間が発見、開発した技術を社会に還元することを手伝うことこそ自分が社会に貢献する道だと考えていました。しかし、石川さんのお話を伺い、世界で活躍する理工系人材になりたいのであれば尖った人間になることに全力を注ぐべきであると強く思いました。

石川さんはアメリカにあるToyota Research Institute(以下「TRI」)に勤めた際、アメリカ人の勤勉さと優秀さに驚いたと話されていました。石川さんは非常に優秀な方です。東工大で非常に優秀な成績を残し、社会人になってからの活躍も素晴らしいです。そんな石川さんでもTRIでは真ん中程度の技術力だったそうです。日本でトップ層の優秀な技術者でも、アメリカでは真ん中程度のレベルという事実に驚いたと共に危機感を持ちました。技術力に大きな差が生まれる要因の一つは雇用システムの違いであると石川さんは話されていました。日本の終身雇用制と違い、アメリカは実力主義の国です。将来日本だけでなくアメリカでも働きたいと考えている自分にとって、技術力を磨き、尖った人間になることは必須であると痛感しました。

石川さんは優れた理工系人材になるためには技術力とビジネススキルの両方が必要であるとおっしゃっていました。以前は私も石川さんと同じスタンスで考えていたはずだったのですが、周りの優秀な友人と自分を比較しているうちに、いつの間にか自分の中での比重が技術力よりもビジネススキルに偏っていました。そしてビジネススキルを含む技術力以外のほかのスキルを身に着けることを技術力を磨くことに向き合わず逃げる言い訳にしてしまっていたと気が付き反省しました。お話を聞いていると、石川さんが心から自分の仕事、研究を楽しんでいることが言葉の節々から伝わってきました。既に開発された技術を社会に還元することも魅力的ではありますが、やはり自分も新しい技術開発に携わりたいと思いました。

今回訪問させていただく機会を設けていただき、石川さんに様々なお話を伺うことができて本当によかったです。今後の自分の活動の一つの転換点になったと実感しており、とても有意義な訪問でした。ただお話を聞いただけにならないよう、さっそく実行に移し始めております。

お忙しい中このような場を設けてくださり、本当にありがとうございました。この場を借りて感謝申し上げます。

岩橋佑季

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