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3期アメリカ9日目

 

本日1カ所目のはTeledyne MarineSeabotix社のAlasdair Murrie氏を訪問しました。

Teledyneとはケーブルや乗り物、センサー、映像技術など様々な分野の企業を抱える会社で、Seabotix社はROVRemotely operated vehicle:無人潜水機)などを専門とする一企業です。

Seabotixの設立の経緯としては、少人数で運搬および操作が容易にできるROVの開発目目指しているそうです。実際の実物を持たせていただけたのですが、我々でも持ち上げることのできる重さであり、コントローラーといったシステム系統を合わせても大人23人で十分持ち運びの可能なサイズ、重さであることを実感できました。

日本にもROVを取り扱っている企業や大学はありますが、その多くは大型のROVで、小型のROVを一般向けに開発しているところはほとんどありません。ですが、ROVはこれまでに利用されてきた海洋調査のみならず、河川調査や、タンク、パイプといった、比較的規模の小さいものや、災害現場といった機動性、あるいは狭い空間へも侵入が可能であるようなマシンの需要が高まっています。すでにSeabotixはアメリカ軍、アメリカ警察、消防、及び一般向けにも、ROVを販売しています。

本日は、まずはじめに、私たちの紹介および大学での専門を紹介した後、Seabotixの扱うROV本体の説明に加え、オプションで装備可能な、様々なセンターやクローラーといったものの説明をAlasdair Murrie氏にしていただきました。その後、開発や制作の現場、セールスのオフィスや、実査に使われるコントローラーやコンテナなども見て触らせていただけました。

私が非常に興味があったのは、スラスター(推進システム、私の専攻の機械宇宙でも用いられる、今回はプロペラの様なものを指す)による姿勢制御であり、各ROVの要求される自由度によって、装着されるスラスターの個数が異なるなど、非常に学ぶ所が多かったです。

また、ROVとタイヤやクローラーなどは一見何も関連性がないようにも思えますが、Seabotix社が開発したシステムにより、まるで無重力空間にでもいるかのように、水中で船底に垂直あるいは逆さまにくっついて、タイヤやクローラを用いてその面上を縦横無尽に動くことができるのです。

そのシステムとは“Vortex Generator”とスラスターの合わせ技で実現しており、Vortex GeneratorとはROV本体の底にある比較的大きめのプロペラを回転させ、その周りが言うなれば吸盤状になっているため、その部分だけ圧力を低くすることで、面への接着を可能にしています。スラスターとうまく組み合わせることで、面に車体を押し付けながら、前後左右どの子へでも、簡単に移動することができるのです。

私がはじめてこのシステムを動画サイトで見た時には、恐らく磁力を用いて船体に張り付かせているのだろうと予測していたのですが、実際はその磁石が放つ磁場が敵に察知され場所が特定される恐れがあるため、そういった方法は採用していないとおっしゃっていました。

この、移動方法は海底内の探索や調査のみならず、タンク内といった小規模の設備点検や、ROV本体に吸引器を装着すれば、清掃機としてもすでに活用されています。

私がこのSeabotixを知ったきっかけというのが、東日本大震災の際、宮城県・福島県沖の海洋調査を行ったROVの中に、我々東工大の広瀬茂男先生の開発されたAnchor Diver 3とともに投入されたのが、Seabotix社の「SARbot」だったからである。そのことについても少しお話を伺い、すでに震災以前から日本企業と連携して沿岸調査を行っており、それに加えてテキサスA&M大学のロビン・マーフィー教授からの要請も相まって、捜索への協力が実現したそうです。

近年では、軍事や警察だけでなく、前述した一般企業の保有する燃料タンク内の調査や一般向けにも販売しており、中にはGoProを装着したものもあり、Seabotix社製のROVのシンプルさゆえの、装着性の自由度の高さがうかがえました。

一般で使われている例としては、湖の所有者が、湖の管理として用い、人が行方不明になった際の探索のみならず、銃や兵器やその他不法投棄などの調査も行っているそうです。

実際にターゲットを設定して、距離を測定しながら接近、追跡をするデモンストレーションを映像で見させていただき、カメラでは捉えきれない周囲の情報もソナー(水中を伝播する音波を用いて、水中・水底の物体に関する情報を得る装置)を用いで情報収集し、的確にたーゲットに接近、発見のプロセスを見て学ぶことができました。

今後の活躍が期待される分野としては、核関連施設への応用であったり、当然災害現場でも今後多くの場面で需要が高まるの私は考えています。すでにイギリスの核施設でもでは施設の管理の一環としてSeabotix社のROVを活用しており、ある程度の放射線であったり、pHの極めて高い液体内や燃料内でも活動が可能であり、日本の原発施設への応用も今後考えられると私は考えました。

 

本日2箇所目はスクリプス研究所を訪問しました。

 

この研究所は1991年に設立され、3000人弱の人員を抱える世界最大級の私立研究機関です。主に化学、生物を創薬と結びつける研究を行っており、大学院が研究所の中に組み込まれているのが特徴です。日本から多くの修士課程やポスドクなど受け入れていることでも有名です。

 

 

今回は、こちらの研究所で博士課程に在籍中の日本人の方2人にお話しを伺いました。

Cravatt研に所属している小笠原さんは大学院4年目で、主にケミカルバイオロジーを扱った研究をなさっています。もともと、この研究室は神経伝達物質である、アナンダミドを扱った研究からスタートしているため、生物学、有機化学など多用なバックグラウンドを持った大学院生、ポスドクで研究室は構成されていました。現在はABPPと呼ばれるタンパク質活性を解析する方法を使用し、阻害剤を作る基礎研究に携わっています。

 

一方、苅田さんは大学院2年目で、Baran研に配属され全合成を研究されています。Baran教授は25歳弱で教授に上り詰め、天然有機化合物の合成経路の発見では著名な方です。その方のもと、月曜日から金曜日まで5:30~20:00まで研究室に入りっぱなしで、研究に打ち込んでおらり、絶対に結果を出すんだ、という覚悟が感じられました。それも、アメリカの大学院生がお金をもらう立場のため、結果主義的な面が日本よりも強く、のんびり研究に打ち込むよいうよりは企業に勤めているという考えの方が近いからです。

研究室自体は30年ほど前の設備と言っても語弊が無いほど、あまり充実したものとは言えないらしいのですが、若い教授の熱意に溢れた教育、きめ細かい指導、みんなで協力しあうラボの雰囲気などで、論文を幾つも投稿していることも掴めました。

 

 

学部がない組織のためTAに携わる必要がなく研究に打ち込める、大学とは異なるため学生に対する教授陣の数が多く、1人につき3人ほど教授が研究の相談にのってくださる、日本企業を含めた世界中の会社から業務提携を持ちかけられ資金提供、(実際にBaran研には日本企業から派遣されていた研究員の方がいらっしゃいました。)を受けている、など世界最高峰に位置する研究所の、恵まれた環境の一部を垣間見ることができました。

 

しかし、彼らは必ずしもアメリカが好きで留学したわけではなく、研究内容でそれぞれ渡米するに至ったと仰っていました。試薬や設備の充実度、長期間の生活などを考えると必ずしも留学する必要はないのでは、という正直なお話しも伺え、様々な知見、考え方を得られた訪問になりました。

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