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11期 岩橋佑季 文化体験報告

こんにちは、11期岩橋佑季です。先日行った文化体験学習について報告させていただきます。今回私は茶道を体験しました。茶道を選んだ理由は、茶道には日本文化のすべてが含まれているという話を以前聞いたことがあったからです。茶道を体験することで日本文化について深く理解することができると考えました。日本文化を深く理解することで、海外の文化や価値観に触れたとき、双方を比較し、相違点、共通点を見つけ、本質を理解することに繋がると考えています。

[事前調査]

文化体験をより有意義なものにするためにも、事前に茶道について詳しく調べました。このブログでは、調べた内容の内いくつか重要なものを抜粋して書かせていただきます。茶道とは、一服のお茶を通して、和敬清寂(後で詳しく説明します)の教えを心に刻む日本独特の道です。この報告書では、茶道の最も重要な考え方である四規七則と侘び寂びについて説明します。

  • 四規(和敬清寂)
    和敬清寂とは、茶道の4つの基本となる心得を表す言葉です。四つの漢字はそれぞれ「和やかな心」、「敬う心」、「清らかな心」、「静寂の(動じない)心」を表しています。茶道の目的は、誰とでも仲良く和やかに接し、敬う気持ちをもって清らかな関係を築き、何があっても動じない心を育むことにあります。
  • 七則(利休七則)
    利休七則は、利休とその弟子との会話から生まれた言葉です。ある日弟子の一人から「茶の湯とはどのようなものか」という質問を受けたところ、利休は以下のように答えました。
    「茶は服のよきように点て、炭は湯の沸くように置き、花は野にあるように、 さて、夏は涼しく冬は温かに刻限は早めに、降らずとも雨の用意、相客に心せよ」

    1. 茶は服のよきように点て
      お茶は賓客の事をよく考えて、心を込めて点てましょうという意味です。この言葉には和敬清寂の和の意味が込められています。一生懸命にお茶を点てる事で、主と客の心を通わせることができるということです。この言葉の本質は、「事を行うには、相手の気持ち、状況を考えること」ということにあると思います。
    2. 炭は湯の沸くように置き
      昔は炭を使って湯を沸かしており、現在のように水温を調節するという事はなかなかに大変なことだったと思います。お茶に最適なお湯の温度を保つためには炭を上手に配置することが必要です。しかし、上手な炭の配置は季節や湿度、場所などの様々な外的要因に影響を受けるため、師匠の真似をするだけではうまくいきません。状況に柔軟に対応できる力を身に着ける必要があります。この言葉は、「物事の本質を見極めることの重要性」について説いた言葉です。
    3. 花は野にあるように
      茶室の床には花が添えられています。この花の添え方について説いた言葉です。そのまま読むと、花を自然に咲いているように添えなさいという意味に聞こえます。しかし、この言葉は表面上の自然らしさを説いたのではなく、内なる自然らしさについて説いた言葉です。花を自然そのままに再現するのではなく、一輪の花から、野に咲く花の美しさや命の尊さにまで想像がいきわたるように心がけよ、ということです。
    4. 夏は涼しく冬は温かに
      この言葉も「茶は服のよきように点て」と同様、賓客に思いやりを持つことを説いた言葉ですが、それだけでなく、自分の心を自然と一体化させよ、という意味も持ちます。
    5. 刻限は早めに
      言葉通り受け取ると、今でいう五分前行動ということになるのですが、本質は時間厳守ということではなく、五分前行動によるメリットにあります。時間に余裕をもって行動することは心のゆとりに繋がります。心にゆとりを持つことで初めて主人と客人が心を通わすことができます。
    6. 降らずとも雨の用意
      雨に備えて傘を常に用意するように、いついかなる時にも落ちついて行動できる心の準備と実際の用意を怠らない事の重要性について説いた言葉です。
    7. 相客に心せよ
      相客、すなわち同じ茶席の客同士が心を通わせることについて説いた言葉です。主人と客人が心を通わせるだけでなく、客人同士も含め、全員が心を通わせ楽しい茶席を心がけようという事を伝えています。
  • 侘び寂び
    侘び寂びとは侘びと寂びの二つを合わせた日本独自の美意識のことです。侘び寂びは一つの単語として普及していますが、本来は侘びと寂びは二つの異なる言葉です。

    1. 侘び
      侘びとは、気落ち、悲観、鬱鬱などの内面的なものを表しています。おかれている状況を悲観することなく、むしろそれを楽しもうとする精神的な豊かさを表現した言葉です。
    2. 寂び
      寂びは、古びる、色あせる、枯れるなどの表面的なものを表しています。古さや静けさ、枯れたものから感じる趣を表現した言葉です。

内面的な本質が表面的にあらわれていくその変化を「美」と捉える概念は、日本独自の文化です。この侘び寂びの代表的な文化として茶道が上げられます。利休が完成させた「わび茶」は、不足や欠如、欠乏、不自由を肯定し、簡素で閑静を楽しむ茶の湯のことです。場所や道具にこだわるより精神的なものを重要視することが「わび」という概念になったといわれています。

[体験の内容]

 今回私は駒場・和楽庵という所で茶道を体験してきました。亭主としてお茶を点てることはなく、客という立場で亭主から茶をふるまってもらい、茶道の魅力を体験しました。駒場・和楽庵は小堀遠州流という武家茶道を流儀としています。濃茶と薄茶という二つの異なる抹茶を振舞って頂きました。

  • 濃茶
     茶室に入る前の準備から厳格な手順を教えていただきました。腕時計やアクセサリーなどをかたずけ、喚鐘を人数分鳴らした後(今回は特別に人数は私一人でしたが3回鳴らしました)、扇子や懐紙など、必要なものを手にもって、飛び石の上を進んでいきます。蹲で手を洗い、口をゆすいだ後に茶室に入室します。
     茶室に入ったらまず初めに部屋全体を見渡し、心を茶室に集中させます。床の前まで進んだら、その場で前に扇子を置き正座でお辞儀した後、正座のまま床を拝見します。床においてある花や掛物などの小物は、その茶会のテーマを表しているため、これらを観察しながら茶会のテーマを想像します。今回の掛け軸の言葉は4酔。春は花に酔い、夏は風に酔い、秋は月に酔い、冬は雪に酔う。四季それぞれに趣があるという事を季節の変わり目である今だからこそ実感できるのだろうと考えました。季節を大切にする茶道にピッタリの言葉だと思います。その後茶道具にもお辞儀をした後、客席に正座し和菓子を頂きます。今回は菜の花をイメージした和菓子を頂きました。
     その後亭主が一服どうぞという言葉を合図にお茶を点て始めます。今回私はお茶を自分で点てることはなかったのですが、目の前で亭主が立てている姿をじっくりと観察させていただきました。亭主の洗練された動作や静かな空間に茶筅と窯の音だけが響き渡る様子など、あらゆる部分に長い年月をかけて洗練された要素を垣間見ることができました。
     お茶を提供された後、茶碗を両手で手に取り、90度回します。自分より左に座っている客にお先にと一言かけてから頂きます(今回私は一人でしたが試しにいわせていただきました)。濃茶は普通のお茶(薄茶)の2倍以上の抹茶を使用することに加え、お湯の量も少量のため、非常に濃厚でした。抹茶の味は濃かったものの苦いということは全くなく、コクの強い大変まろやかな味わいでした。個人的には薄茶よりも濃茶のほうがおいしかったです。
     お茶を飲んだ後、使用した茶道具、茶碗を紹介してもらいました。今回の茶碗は黒を基調とした比較的シンプルなデザインの茶碗でしたが、艶やかできれいな光沢がとても美しかったです。茶会の後で、300年以上の歴史ある茶碗だと聞き驚きました。普段生活していて300年も前に作られた物に触れることなどなかなかないため、貴重な経験でした。
  • 薄茶
     基本的には濃茶の時と似たような手順なのですが、薄茶の席は濃茶の席よりもカジュアルなため、亭主との会話を楽しみながらお茶を頂くことができます。掛け軸に関しても、亭主から詳しく説明していただきました。今回の席のテーマは滝です。掛け軸の言葉も瀧という一文字でした。たったの一文字ですが、その文字は崖の上から下に向かって水が激しく落ちる様子を見事に表現しており感動しました。使用した茶碗は飛瀑という200年以上の歴史ある茶碗です。飛瀑とは瀧を表す言葉です。この茶碗に光を当てると、美しい青色が輝いて見え、瀧の水しぶきを連想させることからこのような名前が付けられたそうです。このように掛け軸や茶碗について、亭主に質問しながら楽しくお茶を頂けることが、薄茶の魅力の一つだと思います。

[感想]
 今回私は駒場・和楽庵で茶道を体験しました。これまで茶道と聞くと、いろいろなルールが設けられており堅苦しいというイメージでした。確かに、茶道には様々なルールが存在します。しかし、茶道の本質は和敬清寂の精神を持って主人と客が心を通わせ、一期一会の茶会を楽しむことにあることが分かりました。主人が上に立ち、客に茶を振舞うというよりも、主人と客が対等な立場でそれぞれ相手のことを思いやり、一緒に楽しい茶会を協力して作り上げるという考え方こそ、茶道における正しい心構えなのだろうと思いました。
 今回茶道を体験し、自分の五感が研ぎ澄まされるような感覚を得ました。静かな空間で一つのことに30分以上集中することのできる機会は、日常ではなかなか得られません。視覚、味覚を使うことはもちろん、釜や茶を点てる音、抹茶の香り、茶碗の肌ざわりなど、一回の茶席は五感すべてにやわらかな刺激を与えてくれました。このように感覚が研ぎ澄まされる空間だからこそ、相対する人の波長を強く感じ、表面的でない心の通った交流を楽しむことができるのだろうと思いました。
 自分は今まで、茶道については教科書でしか触れたことはありませんでした。茶道の世界は奥深いため、当然今回の体験だけで茶道の世界を理解することはできませんでしたが、その魅力を実感することはできました。総合芸術である茶道には日本文化のすべてが詰まっているという言葉の意味を少しだけ理解することができたと思います。おもてなし、侘び寂び、クールジャパンなど、海外の人が日本文化と聞いて連想するであろう言葉のすべてを茶道という文化は含んでいます。このような素晴らしい文化を育んできた日本で生活できていることをありがたいと改めて感じました。これからも、日本文化をたくさん体験し、日本の魅力を世界に共有できればと思います。

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